ここは、仁王山（イナンサン）とスドン渓谷の麓に位置する「西村（ソチョン）」と呼ばれる街。かつて、多くの文化人や芸術家が暮らしていた街としても有名です。今回ワウソウルは、そんな西村の街を100年以上見守り続けてきたという一軒の韓屋（ハノク）にお邪魔しました。韓屋とは韓国の伝統家屋のことで、古くから人々の暮らしを支えてきた生活空間です。映画やドラマでしか目にしたことのなかった本物の韓屋へみなさんをご案内します。

「ソチョンジェ」と名付けられたその施設は、ファッションデザイナーのキム・ナムジン先生が古くなった韓屋をそのまま譲り受けたのち、自らリフォームを施して新しく生まれ変わらせた“文化空間”です。ここでは、韓屋の全体を利用してカルチャースクールを開いたり、芸術分野の展示会などを開催することが可能です。また、施設が空いている時にはグループでの宿泊体験をすることもできるといいます。ワウソウルが取材に訪れた2013年11月にはちょうど、キム先生ご自身の作品展が開催されていました。

リフォームを施したといえども、原形は崩さず昔ながらの韓屋そのもののスタイルを大切にしている「ソチョンジェ」。季節の移り変わりを肌に感じながら、冬は暖炉で暖かく、夏は風通しがよく、涼しく過ごすことができるのが特徴です。装飾品のひとつひとつに韓国の粋を感じながら時間を忘れてゆったりくつろぐことができます。

展示会の開催時には入場料5,000ウォンで嬉しいお茶とおやつのサービスが付いてきます。これはキム先生のお人柄でしょうか、「せっかく来てくださったのだから、これも食べて～あれも食べて～！」とサービス満点です。まさに韓国のお母さんを思わせてくれる温かい配慮に、実家の母を思い出して胸がジンと熱くなってしまったワウソウルスタッフなのでありました。（※尚、サービス内容は日々異なりますのでご了承ください）

皮革や天然染色で作り上げられるキム先生の作品が、韓屋全体を広く使用して展示されています。実際に手に取りながら作品のひとつひとつを感じ、気にいったものがあれば購入することも可能です。セミオーダーも受け付けているので、個性的なファッションを愛する方はぜひキム先生の世界観に触れてみてください。
（※写真は2013年11月22日から2014年01月26日まで開催されていた「錦衣還郷展」の様子です。）

笑顔が印象的なキム・ナムジン先生。この笑顔と親しみやすい人柄で訪れる人を温かく包んでくれるキム先生は、かつてガンを患い、死の淵を彷徨った経験を持ちます。一度は死を覚悟した彼女は、もし生きることができるなら「いいこと」だけをしていきたいと願ったといいます。一人の作家でもある彼女は、作家として当然の夢である「自分だけの展示ルーム」を持ちたいと考えたこともあったそうですが、今後は芸術を志す人や、韓国の伝統を愛する人にこの「ソチョンジェ」を提供したり、一般開放することで自身の夢が叶うといいます。そんな、人間味に溢れたキム先生の「ソチョンジェ」へ、ぜひ一度お立ち寄りください！