全国の韓薬のうち約70％が取引される京東(キョントン)市場。その一角にあるビルの地下に「ソウル薬令市　韓医薬博物館」があります。2006年に開館したこの博物館では、韓医学の歴史をはじめ、韓薬材の採取に使われた道具、韓薬材や韓方茶などの展示がなされています。さらに韓方医学による体質チェックなどの体験プログラムも用意されており、東洋医学や健康に関心が高い方におすすめの博物館。ビル地下2階のワンフロアで、規模は小さいながらも設備がしっかりと整った施設です。

韓医学の歴史と文化のコーナーでは、朝鮮時代に病気に苦しむ貧困の人たちを救済した施設、「普済院(プジェウォン)」の模型や医学書などが展示されています。そして、韓医学の発展に貢献した朝鮮時代の2人の医学者、「許俊(ホジュン)」との「李済馬(イ・ジェマ)」の業績や生涯もパネルで紹介。許俊は世界遺産にも登録された医学書「東医宝鑑(トンイポガム)」を著したことで知られていますが、日本でも放映された韓国MBCの大河ドラマ「ホジュン」をご覧になった方ならご存知のはず。そして李済馬(イ・ジェマ)は人間を4つのタイプの体質に分け、それぞれの体質にあった予防や治療が必要だとする四象体質医学を創案した医学者です。展示を見ながら韓医学の歴史を知ることができます。

館内では500種以上ある韓方薬のうち、約400種類を植物性・動物性・鉱物性に分類して展示しています。貧血に効果がある鹿の角や、冷え症に効く高麗人参、キノコなどから、毒性があり服用できない薬剤までが取りそろえられています。日本人にも人気のある五味子茶(オミジャチャ)をはじめとする各種韓方茶、韓方料理の模型などもあり、生活に密接な部分にまで韓薬材が利用されている例を知ることができます。たとえば、代表的な韓国料理、サムゲタンのなかに入っているナツメも韓薬として使われている素材のひとつ。ナツメには心を安定させる効果があるそうです。

館内には子どものための韓方体験コーナーもあります。そこでは動植物が描かれたパネルが設置されており、楽しく学習できるようになっています。そのほか、ソウル薬令市の歴史や薬材の産地の紹介や1960年代の韓方薬房の模型も展示されています。

韓医薬博物館では体験プログラムも充実しています。韓薬を薬包紙に包んだり、臼や薬研(やげん)などの道具を使って、実際に薬を挽く体験もできます。その他、韓薬材を入れるための小さな袋や、天然の韓方石鹸を作るプログラムも用意されています(不定期)。詳しい内容は公式ホームページ(韓国語)をご覧ください。

体験室では自身の体について理解できるプログラムもあります。そのひとつは体質チェックテスト。19世紀の医学者、李済馬(イ・ジェマ)が提唱した四象体質医学による「太陽人」「太陰人」「少陽人」「少陰人」の4つの分類のうち、自身がどれであるかを知ることができます。四象体質医学はそれぞれのタイプに合う食品を摂取すれば健康を維持でき、病気になっても個々の体質に合った薬で治療をすべき、というもの。日本語のチェックシートも用意されています。その他、血圧を測定したり、コンピュータによるストレスチェックも可能です。

休憩室では韓方茶を無料で楽しむこともできます。見学のあとはここに立ち寄り、お茶を飲んでほっと一息ついてから次のスポットに出かけるのもよいですね。