ここは、韓国の伝統文化が生きる街、仁寺洞（インサドン）。流行に左右されることなく、ゆっくりと時が流れるような雰囲気を醸し出すこの場所は、もっとも韓国らしさを感じられる街として有名で、連日多くの外国人旅行者が訪れます。仁寺洞メインストリートを挟んだ両脇に、伝統工芸品や韓国の特産品、おみやげ等を販売するお店が軒を連ねます。

今回紹介するのは、そんな仁寺洞に位置する「誠信筆房（ソンシムピルバン）」というお店です。ここでは、筆の巨匠・丁海漲（チョン・ヘチャン）氏の伝統ある筆をはじめとする書道道具や、東洋画の絵画道具等が販売されています。さっそくお店のなかへご案内しましょう。

仁寺洞の入口に位置する大きなビル「テイル ビルディング」の2軒隣に「誠信筆房」はあります。うっかり通り過ぎてしまいそうなほどこぢんまりとしたお店ではありますが、一歩店内に足を踏み込むと、そこに並ぶ素晴らしい商品に目を奪われてしまいます。ここへは主に、書道家や東洋画を嗜む方々が多く訪れるというのですが、誰もが一度は手にしたことがあるであろう筆や墨の匂いに、どこか懐かしさをおぼえることでしょう。

筆の価格は一般的なものであれば5,500～15,000ウォン程度で販売されていますが、“名筆”と呼ばれるものともなれば数百万ウォン以上するものもあるのだそう。「誠信筆房」が良心的なのはほとんどすべての商品に値札が付けられているため安心して吟味できるという点です。筆を使用した粋なインテリアにも注目してみてください。

店内の壁には、筆の巨匠・丁海漲（チョン・ヘチャン）氏の代表的な作品やご本人の写真などが飾られています。普段は工房で筆の制作のみを行い、お店にはなかなかお見えにならないという丁氏ですが、彼の作品を求めて定期的に日本から訪れるファンもいらっしゃるのだとか。そんなファンの方が丁氏に宛てたお礼の手紙も店内に飾られています。その他、韓国の有名テレビ番組でも丁氏の作品が取り上げられたり、2011年には「大韓民国伝統工芸大賞」を受賞するなど、一言では語り尽くせない素晴らしい経歴を今なお積み重ねられている最中です。そんな筆の巨匠・丁海漲氏に一度はお会いしてみたいものです。

現在、お店を切り盛りされているのは丁海漲氏の奥さま、ハン・ウォンジャ氏。やわらかく穏やかなイメージのハン氏は、もう30年以上も丁海漲氏とともに歩んできたといいます。ご本人は韓国語以外の言語には自信がないとおっしゃっていましたが、中国語が堪能な息子さんと日本に滞在経験のある娘さんがいらっしゃるので、商品について気になることがあればなんでも尋ねてみましょう。

書道道具の他にも東洋画に精通した商品も多く取り揃えられています。絵具類も種類が豊富で、絵画に関するものであればないものはないといったイメージです。これらの商品もやはり専門分野で活動中の方々が好んで購入されていくといいます。

韓紙を使用した扇子やうちわ、ポジャギ（韓国の風呂敷・巾着袋）、ノリゲ風（韓服に飾るアクセサリー）ストラップといった韓国ならではのおみやげもこちらで購入することができます。価格も2,000～5,000ウォン程度ととってもリーズナブルで、ばらまき用のおみやげとしても最適。韓紙で作られたレターセットも人気です。

韓国情緒溢れる街を見学したい方は迷わず仁寺洞（インサドン）へ！そして、さらに奥深い韓国の伝統に触れたい方はぜひ「誠信筆房」へお立ち寄りください。