いつも人でごった返す仁寺洞（インサドン）を少しだけ抜け出してみると、韓屋がぎっしり詰まっている古い街に出くわします。道にまよったり、あてもなく歩いている途中にしか見つけられないようなこのお店は、日韓合作映画のカフェソウルのロケ地でもあります。映画のなかで日本から来た、フード・ルポライターの順（ジュン）が伝統的なお店を探すために鍾路の路地をあちこち歩き回り、発見したお店です。

映画のなかでは「牡丹堂（モランダン）」という名前だった「トゥルアン」。今も当時の看板が店の門の外にそのまま残されており、店のなかには当時撮影の様子とJohn-Hoonのファンたちが実際にお店を飾りつけた場所が用意されています。

トゥルアンの代表メニュー、十全大補湯（シプジョンデポタン）。気を充填し、体を温めてくれる十全大補湯は“保養の源”と呼ばれるほど、健康にとてもよいお茶です。ナツメ、高麗人参、生姜、オケラの根、熟地黄、トウキ、芍薬、肉桂、甘草、川芎、キバナオギの根、茯苓など12種類の韓薬材料が入っています。韓方では10を完全な数字と考えるため、このような名前がついたといいます。十全大補湯を注文した場合、生姜を薄切りにして乾燥させた生姜片薑（センガンピョンガン）がサービスされます。価格は8,000ウォンです。

湯気がふわふわと出るタンパッチュク（甘いアズキ粥の意味、韓国風のおしるこ）は見ただけでもよだれが出そう。韓国でタンパッチュクは冬至に食べる季節料理です。最近は食事の代用や食欲をわかせるための珍味として、伝統カフェで身近に触れられるものとなりました。タンパッチュクのなかにはもち米で作ったセアルシム（小さな団子）と栗が丸ごと入っていて、堅果類と桂皮（シナモン）の粉がふりかけられて出てきます。美しいタンパッチュクのなかに小豆の粒が入っていて、その食感も同時に感じられるトゥルアンのタンパッチュク。価格は7,000ウォンで、冬限定のメニューです。

「トゥルアン」のすべてのメニューの材料、ひとつひとつオーナーの手に触れてないものはありません。このような点が最も際立つのがまさにこのヌルンジ（おこげ）菓子。ご飯を炊くたびにできるおこげを食べやすい大きさに切り、注文が入ったときごとにキレイに油であげ、砂糖の粉をふりかけて出てきます。甘くて香ばしいヌルンジ菓子は甘酸っぱい五味子茶（オミジャチャ）とマッチ！五味子茶はアイスまたはホットをお好みに合わせて注文可能。ヌルンジ菓子セットの価格は11,000ウォンです。

黒い豆がいっぱいに入ったコンソルギ（豆と米粉の餅）は噛めば噛むほど、豆特有の香ばしさが感じられる絶品。ヨモギをきれいにすり潰して入れた、ヨモギの香りいっぱいのカレトク(棒状の餅）は一緒に出てくる甘いジョチョン（造清/水あめ）につけて食べると美味しいです。コンソルギとヨモギカレトクのセットは菊花茶、柿の葉茶、桑の葉茶の3種類のなかから選ぶことができ、価格は11,000ウォンです。コンソルギとヨモギカレトクは単品でも注文可能で、単品で注文する場合は、各7,000ウォンです。

誰かが行くところではなく、自分だけの隠れ家のような場所が好きな人におすすめしたいトゥルアン。店のなかにある小さな庭には春、夏、秋、冬、季節ごとの風雅な趣まで感じることができます。韓国の伝統茶をトゥルアンでいかがですか？